コリアンダーをスペインで食べない不思議、調べてみました。
今年はパセリをプランターで育ててます。健康にいいし、色味はいいし、味も爽やかになる美味しいハーブで大好き、スペイン料理には欠かせない材料の一つ。
でも、スペイン国民がヒステリックな恐怖のもと、パセリを使い始めた一つの恐ろしい理由があるのを知っていますか・・・?
スペイン人がコリアンダーを食べなくなった日
現在のスペイン、ポルトガルがあるイベリア半島では、15世紀中頃まではアフリカ地中海沿岸が原産地の一つとして挙げられるコリアンダー(スペイン語ではCilantro)が広く使われていました。
アルアンダルス文化を残す南部、そして東部の地域では、コリアンダーが育てやすい植物であること、また有効な薬用成分を豊富に含むことから、14世紀ごろまでほぼすべての(約8割)食事にコリアンダーの種子、フレッシュな葉、乾燥させた葉や茎が含まれていたと言われています。
しかし15世紀半ばから終わりにかけて、カトリック両王の元、時の異端審問会で、ある迷信的な理由からコリアンダーを食する人々を「異端」であるとしたことから、審問会の執拗な追求、残忍な拷問と処刑などを恐れた人々がパニックになり、食卓からコリアンダーを排除、代わりにパセリを使うようになったそうです。
「コリアンダーは邪悪」であった
迷信的な理由とは、コリアンダーが「異教徒」のハーブ、「ムーア人やヘブライ人のもの」と異端審問会当局が流布したことから始まります。
事実、1486年に一人の異端者が死刑に処された際、その罪を証明する異端的行為として、1.ユダヤ教への信奉、2.モーゼを支持しイエスを否定したこと などと並び、「邪悪なコリアンダーで食べ物に味付けをするなど、ヘブライ風の食事をとっていた」という記載があったことが記述されています。
同じイベリア半島でも、ポルトガルの異端審問会へ「邪悪なコリアンダー」の波が届いたのは少し後になってから、異端審問会の勢いが弱まっていた頃であること、そしてポルトガルでは異端審問会がそこまで極端な迫害などを行っていなかったことから、引き続き料理にコリアンダーが使われ続けたとのことです。
迫害を免れた地もある
ちなみにポルトガルに近いウエルバの一地域のガスパチョにはコリアンダーが伝統的に入る、とか、飛び火地になるカナリア諸島ではコリアンダーをたっぷり使った緑のソースMojo verdeがあるなど、異端審問会の力が及ばなかった範囲ではコリアンダーのレシピが残っています。
もし、15世紀のスペインでコリアンダーが排除されなかったら・・
今、私がプランターで育てているのはコリアンダーだったかもしれません・・・(大好きだから良し)
ちなみに今のスペインでは、外来の食材としてのコリアンダーが流行っています。スタンダードだった食材が一旦完全に排除され、また「新しいもの」として戻ってくる、そんな稀有な歴史を持つ食材って他にありますか・・?
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