スペイン語のH(アチェ)を発音しない理由 スペイン語勉強 #81

スペイン語のHを発音しない理由

スペイン語のHは発音しない、と教科書では教わります。でもなぜでしょう?

そして発音しないのに、なぜ文字として残っているのでしょうか?

こんにちは!北スペインの食と観光情報、そしてスペイン語学習に夢中なEriko(@greenspainplus)です。

Eriko
スペイン語力を活かして、これまでにスペインワインエージェント、イベント通訳、商業冊子翻訳、テレビ動画翻訳などを行うほか、マンツーマンのスペイン語レッスンを1,000件以上提供してきました。

このブログでは、スペイン語学習の独学のコツやスペイン語の使える表現を紹介していきます!

今日は、スペイン語のHを発音しない理由、そしてそれが書き言葉に残った理由について解説していきます。

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スペイン語のHを発音しないのはなぜ?

スペイン語の「H」というアルファベットは、スペイン語では全く無音です。一切発音しません(一部地域では発音が残る場合もあります。あとCとの組み合わせでCの発音を変えることはあります)。

そして全く無音であることから、一度は書き言葉から消えかけて、その後復活した歴史があります。

時は1713年、日本は徳川家継が第七代将軍になったあたり、スペインではボルボン朝最初の国王でフェリペ5世(ルイ14世の孫)の勅令により、スペイン語をスペインの標準語として規定し辞書を発行し、文法や正書法を定める組織、La Real Academia Española(スペイン王立アカデミー、RAE)が設立されました。

このRAEが、19世紀初めまでに取り組んだ正書法の制定のなかで、Hは語源を守るため、そして伝統を守るために残すことを決められたと言われています。

スペイン語の大部分の元となっているラテン語においては、Hは古くは有気音(摩擦を帯びた息を吐く音)とされていましたが、早い段階で(ローマ時代にはすでに)この発音は省略されていたそうです。

古くはフェニキア語でしっかりと有気音として(現在のスペイン語のJに近い)使われていた音が、フェニキア語を引き継いだギリシャ語から、次にラテン語に引き継がれる際にどんどん弱くなっていった、という説があります。

スペイン語のHが書き言葉に残った理由

以来長い期間、ラテン語を由来とするスペイン語でHが発音されずに来たことから、中世ではHを書き言葉からも無くす動きが見られた時代があります。例えば、Hora(時間)をOraと書いたり、Hombre(男)をOmbreと書いたり、Había(Haberの三人称線過去)をAbíaと書くなど。

その後、13世紀の半ば〜15世紀にかけて、スペインではラテン語をやラテン文化を模倣する流行が訪れ、改めて「Hを発音しないけど書く」ことが再興します。

ラテン語由来であること以外に、Hで書かれる理由もある

Fから始まり母音が続く単語

そもそもHが含まれる単語だった、という以外に、すでにHの使用について規定され普及した16世紀から新しくHで書かれるようになった単語があります。

Fから始まり母音が続く単語は、バスク語の影響を受け有気音で発音されていた経緯から、その後、ラテン語のFからHで書かれることになったものがあります。例えばFerrum(鉄)→ Hierro、Fariña(小麦粉)→Harina、Ficus(いちぢく)→Higo などが挙げられます。
この流れから、bufo(フクロウ)→búhoのように、Fから始まらなくともFを含む音が、Hに書き換えられた例もあります。

(ガリシア語では今でも小麦粉は「Fariña」という単語を使います。そういうことだったのかぁ。。とガッテンしました。)

そしてこの、ラテン語でFから始まる単語がHに書き換えらたものついては、当初その経緯を知る有識者の間で仄かに有気音として発音することがあったようですが、15世紀終わりには流行が変わり、Hを発音することは下層階級の人たちの野蛮な音として捉えられるようになり、その後完全に発音が消えます。

二重母音のため、読み間違える可能性があった単語

単語の見分けのためにHをつけることにした単語もあります。例えばHueso(骨)という単語は、ラテン語ではOssumと記し、Hはついていません。しかし、スペイン語のHuesoをUesoと書くと、これがベソと読めてしまう書き方になります。

※補足:スペイン語のUとVは、古くは同じ「U」の母音として発音され、また子音としては「B」として発音されるアルファベットでした。つまり、Uesoは「べそ」として間違って読まれる可能性がありました。
これに、「発音しないH」をつけることで、「Hueso」のHの次のUは子音としてではなく母音の「U」として読まれるため、「ウエソ」の発音が守られることになります。

骨に関連する、骨の〜、という形容詞はóseo, óseaと、Hは付かないのも、これで納得です。

同じ理由で、Huevo(ラテン語はOvum)も、後からHがついた単語です。

ラテン語以外の由来でHが付いている単語

このグループは比較的最近スペイン語に取り入れられた外来語が多いです。

スペインでも人気料理となっているHummus(アラビア語でひよこ豆)、Hámster(ドイツ語でハムスター)、Hándicap(英語)、Hong Kong(中国語) など、これらのHは、元の発音をなぞって有気音(Jに近い)音を出す人もいれば、スペイン語に忠実に無音を貫く人もいます。

あ、ちなみにHobbyは完全に「ホビー」って言いますね。でも、英語のHというより、やはりJに近い発音になります。

う〜ん、歴史って、面白いですね!

発音の仕組みを知ると、もっと話すのが楽しくなります。

他の記事もぜひ読んでみてくださいね!最後まで読んでいただきありがとうございました^^

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参考:Nunca lo hubiera dicho(RAE)
¿Por qué la letra H existe pero no suena?
La incógnita de la letra H: ¿por qué existe si no suena?

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