ガリシア州ア・コルーニャ県パドロン
ガリシア州、サンティアゴ・デ・コンポステーラから南西に30キロ弱の場所に、パドロンという街があります。
その名は小粒のピーマン、ピミエントス・デ・パドロン(原産地呼称名はピミエントス・デ・エルボン)で知られています。
パドロンに行った目的
今回パドロンに行ったのはもちろん、ピミエントス・デ・エルボンの畑を見るためでした。ガリシアの夏の野菜と言えばこの小粒ピーマン。
17世紀、フランシスコ修道士たちによってメキシコ・タバスコ州から持ち込まれたピーマンの種をパドロンの教区エルボンで栽培したのが始まりです。
しし唐に似ていますがより肉厚、揚げて大粒の塩を振って食べます。
5月から10月末までの期間のみの栽培・販売とのことで、ぜひ畑を見てみたい!と6月半ば、チーム料理人とスペイン好きで行ってきました。
パドロンに行く前に驚いたこと
訪問予定日の3か月前に、観光インフォメーションセンター宛てのメールで、畑へ訪問可能か問い合わせをしていました。
翌日には生産者へ尋ねてもらえるとお返事あり、その数日後には生産者OKのお返事がいただけ、さらに担当いただいたアルベルトさんみずから、「よければ街も案内します」との親切なお言葉が。
旅の準備中のこういう出来事、嬉しすぎました。
パドロンに行って驚いたこと
パドロンで道を横切る巡礼者の姿・・・「あれ、ここって巡礼の道通っていたっけ?」
実はパドロンは中世から熱心な信者が訪れ続ける巡礼地で、サンティアゴ・デ・コンポステラに到達した巡礼者たちは、かたや日本でも有名なフィニステレを目指す人、そしてかたやパドロンを目指す人と分かれる(またはどちらも訪れる)そうです。
フィニステレといえばその名の通り「終わりの地」、衣服を燃やして巡礼が終わるカミーノ・フランセスの最終地点というイメージで有名ですが、「・・パドロンて何があるの?」
すごいのがありました
パドロンの街のシンボルともなっている、船のマーク↓この船の中には、二人の男性と右側に小さな天使、そして中央に横たわる一人の男性が彫られています。
サンティアゴ・デ・コンポステーラは聖ヤコブの亡骸が見つかった場所として聖地となりましたが、実はそのサンティアゴ伝説はここパドロンから始まったと言われています。
紋章となっている船の図は、二名の男性(弟子たち)が、パレスチナから聖ヤコブの遺体に付き添い、星に導かれ天使がひく石舟に載っている姿で、この船はサル川を通りパドロンにたどり着いたと言い伝えが残っています。
(実際は現在のパドロンから少々北上したイリア・フラビスという村にたどり着き、その後10世紀にパドロンの街ができた)
その石船を停めるためにロープをつないだ石というのが!パドロンに今もなお!あるんです!
これはレプリカです。すみません。
本物はこちら、紀元一世紀、聖ヤコブの遺体を載せた石舟が係留されたとされる聖石(ペドロン)です。
元はローマ時代の文字が書かれた、石像の土台と言われる説がありますが、サンティアゴの舟が係留されたあとはカトリックの聖遺物となり、十字架があとから掘られたそうです。
また、このペドロンがあることから、町の名前がパドロンになったと言われています。
このペドロンは、以前は(いつまでか失念)川沿いに設置されたままだったそうですが、中世からの巡礼者がみなこの聖石を抱きしめたり、欠いてかけらを持ち帰ることが頻繁にあったため、現在はパドロンのサンティアゴ教会に安置されています。
その他、パドロンには、サンティアゴが乗ってきた石の舟、そして、舟から降ろしたサンティアゴの体を横たえた石(自然と棺桶の形に開いたという伝説あり)など様々な聖遺物があると言われています。
全く勉強不足でした!ごめんなさい!パドロン!
また、サンティアゴ教会となりのサンティアゴ橋を渡ると、奥にそびえるのはカルメン修道院、手前にはカルメンの泉があります。
この泉は、聖ヤコブが石を三回杖で叩き奇跡的に水が湧き出したという言い伝えがある泉です。モニュメントは16世紀に建築され、中世から多くの巡礼者がこの聖なる湧き水でのどを潤してきたそうです。
泉に向かって左手の坂を上がっていくと、アルベルゲ(巡礼者宿)の目印が。
パドロンの小さいアルベルゲは先着順だそうで、多くの巡礼者が並んでいました。
アルベルゲを過ぎ、階段を上るとカルメン修道院が。18世紀初頭に建築され、現在はドミニコ会の修道士たちが管理しています。
修道院前の広場は展望台のように、パドロンの街全体を見渡すことができます。
中世の叙事詩の一節が、パドロンのパンフレットに記載されていました。
サンティアゴに行き、パドロンに行かないのは、巡礼ではないということだ
「カミーノが始まった地」として熱心な巡礼者が続々と訪れ続けるパドロン。ピーマンだけではない歴史を知りました!
ピーマン以外にも有名な料理もありました
ローマ時代から、周辺の豊富な水源で漁がされていたというヤツメウナギが、ピーマンに次ぐパドロンの名物食材です。
漁の時期は2月〜5月、フレッシュなヤツメウナギが市場に並び、レストランで供されます。
主な調理法は、自身の血液でぶつ切りにしたヤツメウナギの肉を煮るという、なかなかの印象のお料理。
今回は残念ながらフレッシュなヤツメウナギは見つけることができませんでしたが、
旬以外の時期に保存食として食べられるスモークを食べることができました。
塩漬け、スモークしたヤツメウナギの身でグレロス(蕪に似た野菜で葉の部分を食べるガリシア特有の葉野菜)と中心にラコン(豚の肩肉の塩漬け)を巻いてあります。
発酵したアンチョビのような風味もあり、これは日本酒に合う・・と全員一致、旨味の塊の珍味でした!
パドロンでヤツメウナギが美味しく食べれるのはこちら、チェフ・リベラ Chef Riveraです。フレッシュヤツメウナギがある時期にまた行きたいと思います。
パドロンがとても好きになりました
ピーマンが食べたい、ただそれだけで行くことを決めたパドロンでしたが、思わず多くの魅力に出会うことができる旅になりました。
ピミエントス・デ・エルボンの委員会長さんとその旦那さんが笑顔で世話をするピーマン畑、2000年以上前から今も人々が大切に守る宗教的伝承とその聖遺物、地元の料理を誇る素朴なレストラン、市場で騙されてないか心配しトマトをおまけしてくれたおばちゃん、小さくも歴史に満ちた旧市街と、具がジューシーで最高に美味しかったエンパナーダが買えるパン屋さん。
全てはこの方のおかげで出会うことができました。
パドロン観光インフォメーションのアルベルトさんです。観光インフォを閉めて車で畑に連れて行ってくれ、市場、教会、町の公園を案内してくれました。
自身も旅行が大好き、日本にも来たことがあるそうです。
アルベルトさん、本当に本当にありがとう!!
アルベルトさんが一人一袋用意してくれていたパドロンの観光冊子たち!
アルベルトさんがいる観光インフォはこちら、街の中心にあります。
サンティアゴから30分、みなさん、ガリシアに行ったらぜひ行ってください〜!
ピーマンだけじゃない、美味しい、優しい、美しいパドロンへ。
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