アストゥリアスのシードラ Sidra Asturiana 

シードラ 注ぎ方 アストゥリアス

SIDRA

シードラ、(シーにアクセント) りんごをつぶし、果汁を発酵させて作る微弱発泡の酒。

アルコール度数は3度以下。スイートタイプは8度程度まで上がることがある。

  • Sidra natural (シードラ・ナトゥラル) 炭酸ガスや糖の添加を行わないシードラ
  • Sidra gasificada (シードラ・ガシフィカーダ) 炭酸ガス、糖の添加をしたシードラ

世界的に作られている酒のひとつで、有名なのはフランスのノルマンディのシードルでしょうか、スペインではシードラと呼びます。カンタブリア海沿岸で多く造られ、特にアストゥリアス産とバスク産が有名。

”スイートなりんごの発泡酒”として認知されているシードルですが、スペインでは甘みとガスを添加したものはSidra Gasificada(またはSidra achampañada シードラ・アチャンパニャーダ、もしくは単純にSidra dulce シードラ・ドゥルセ)にクラス分けされ、一般的には工場生産の大量流通商品。発酵させたりんご果汁に炭酸ガスを注入し、糖を加えて状態を安定させてステンレスタンクで保存されます。元々のアルコール度数の低さに、炭酸ガスの爽やかな飲み口と甘みが加わって飲みやすく女性や若者に人気。甘みは以下3種類に分けられます。

Sidra extra シードラ・エクストラ セミセコタイプ 甘い
Sidra selecta シードラ・セレクタ ドライタイプ 比較的辛口
Sidra refrescante シードラ・レフレスカンテ 炭酸ガスが強い甘口

シードラ・ナチュラル

一方、Sidra naturalは、炭酸ガス、糖が無添加の、りんごをつぶして絞り、栗の樽で発酵させ冬を越す素朴なお酒。発酵から来る微弱な炭酸がほんのり感じられ、味は辛口、林檎独特の酸味が心地よい。素朴な寸胴のグラスを左手に低く構え、右手に持ったボトルを高く掲げてグラスへ2~4cmほど注ぎます。

シードラの注ぎ方

シードラの注ぎ方 アストゥリアス

よそ見しているわけではないのです、ピコス・デ・エウロパ(スペイン最大の山脈、アストゥリアスの南側内陸に位置する)を見ているそうです、アストゥリアスの男はみんなそうしてシードラを注ぐそうであります。

これはただのパフォーマンスではなく、シードラは、グラスの底で泡を立てている状態が一番その芳醇な香りを楽しめると言われ、その泡立ちが味をまろやかにしてくれます。泡立ちが消えないうちに少量を残して一気に流し込み、その残した少量でグラスをすすいでウェイターにグラスを渡す、というのが伝統のシードラの飲み方だそう。すすがれたグラスを受け取ったウェイターは再度高みからシードラを注いで、順番を待つ次の飲み手にグラスを渡します。

今ではレストランで自動シードラ注ぎ器があったり(シードラのボトルを逆さにセットしてボタンを押すと上の管からシードラが勢いよく出る、日本の熱燗器に似たシステム)、各自がグラスを手に好きに注いで飲んだりします。

この高みからシードラを注ぐ動作を”escanciar エスカンシアール”といい、シードラを注ぐプロを”Escanciador エスカンシアドール”と呼びます。この高みから注ぐのが意外と難しい。ボトルをゆっくり傾けて、ちょろちょろとシードラを出すのだが、距離のあるグラスになかなか入らない。結局はびちゃびちゃと床へシードラを飲ませることにもなるのですが、それはそれで盛り上がります。

レストランによっては、シードラの注ぎ場を設けているところもありました。写真を良く見ると、注ぐときに左手のグラスを傾けてグラスの壁にシードラが当たるようにしています。これもおいしく泡立てる注ぎ方のポイント。

シードラ 注ぎ方 アストゥリアス

こうして泡立てて注がれたシードラを一気に飲み干して、また注がれる、の繰り返しは楽しいだけに自然と杯数が重なり、アルコール度数が低いといえどもお酒が弱い人は要注意。ちなみにある日は、友人と6人で10本の空きボトル(750ml)が並びました~。

シードラ アストゥリアス

シードレリア アストゥリアス

シードラと食事

シードラに合わせる食事といえば、アストゥリアス風煮込みFabada(ファバーダ、白いんげん・チョリソー他腸詰・野菜を煮込んだもの)が定番ですが、鰯 のオーブン焼き(Sardinas al horno、サルディナス・アル・オルノ)や、鱈入りオムレツ(Tortilla de bacalao、トルティージャ・デ・バカラオ)なども良く合います。アストゥリアスのブルーチーズ、カブラレス(Cabrales)とカンタブリア海産アンチョビのタパスとの相性もぴったりでした。

ファバーダ アストゥリアス

シードラと鰯 アストゥリアス

シードラはまた、料理にも使われます。定番のタパスは”チョリソーのシードラ煮(Chorizo en sidra)”、素焼きの器・カスエラに生のチョリソーを並べ、シードラをたっぷり注ぎ弱火にかけて、シードラが半分ほどに煮詰まったら出来上がり。

生チョリソ

他にも鶏のシードラマリネオーブン焼き(Pollo al horno)や牛肉のシードラ煮(Cazuelita de ternera)やメルルーサのシードラ風味(Merluza a la sidra)、蟹のシードラ蒸し(Congrio a la sidra)、舌平目のシードラ煮(Estofado de lenguado a la sidra)などなど挙げればきりがないのですが、爽やかな林檎の酸味、自然の甘みが肉も魚も柔らかい味わいにしてくれます。

シードラと蒸留酒

ノルマンディを引き合いに出すと、シードルがありカルバドスがあるように、アストゥリアスでもりんごの蒸留酒はポピュラーかというと実はそうではありません。アストゥリアスにもりんごの蒸留酒(Aguardiente de manzana、アグアルディエンテ・デ・マンサナ)はありますが、地元の小さな醸造所で造られる蒸留酒は市場に出ることはめったになく、友人を伝って地元で消費されるに留まる場合が殆ど。醸造所直営のシードレリア(シードラバル)や、醸造所と深いつながりのあるバルならもしかして、レアな手作りの蒸留酒が試せるかもしれないので食後に念のため尋ねてみても。

¿Tenéis aguardiente de manzana? テネイス アグアルディエンテ デ マンサナ? りんごの蒸留酒はありますか?

あったらラッキー。二日酔い覚悟で味見させてもらうのもありだと思います。

オビエドで飲んだ変わり種は、シードラのサングリア、激甘だったけれど、おいしかったです。

シードラで作ったサングリア

シードラビネガー

りんごのビネガーに関してはくせの無い味とフルーティな酸味でスペイン全土で幅広く愛されていますが、アストゥリアスに行ったら地元の伝統食品を扱うショップを探してみたいですね。

りんごの地アストゥリアスの伝統のりんごビネガー(Vinagre de manzana)は醸造したSidra naturalに二度目の発酵をかけ、オーク樽に移して2年間熟成させて造る味わい深い熟成酢。スペイングルメ界でも近年脚光を浴びている調味料の一つとなっています。

現在30種類のりんご品種(食用も含む)が栽培されているアストゥリアス、一時期は安く強い外来種の林檎に市場をさらわれたこともありましたが、元々林檎栽培に適した地。現在では野生地品種のアストゥリアス産林檎100%にこだわってシードラを生産する醸造者が多数。そんな国産林檎100%のシードラには2002年からD.O.(原産地呼称)Sidra de Asturias(シードラ・デ・アストゥリアス)の名称が表記可能になりました。シードラを購入する際の良い目安になると思います。

ワインのように品種それぞれの味わいに言及するわけではないけれど、それぞれのシードラ醸造所では違った品種のりんごをブレンドしてオリジナルの味を出しています。市場に出回っているシードラ種類自体が少ないので違うブランドを飲み比べる機会はそうないだけに、ヒホンで毎年10月に開催されるシードラ祭は興味深いですね。

 

あの大きな寸胴のグラスを口に運ぶとき、立ち昇るりんごの豊かで爽やかな香りをかいだら、あなたも絶対シードラが好きになる。

“Si perdimos el paraíso por una manzana, lo recuperaremos por la sidra”

もし一つの林檎のために私たちが楽園を失ったのなら、シードラをもってそれを取り返そう。

アストゥリアスは、確かに楽園らしいです。

参考資料:Un paseo gastronómico por España

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