スペインの新年に欠かせないお菓子
誰が王様? 1月6日の公現祭に食べるフェーブ入りのパン菓子。
フェーブ入りの「幸運のお菓子」として有名なのは、フランスのガレット・デ・ロワですが、スペインで供されるのはリング型のパン菓子。
Roscón(ロスコン、大きなリング型)Reyes(レジェス、東方の三博士)を意味し、その名のとおり1月6日、三博士が子供たちへプレゼントを届ける1月6日に欠かせないお菓子になっています。
ロスコン・デ・レジェスのルーツ
ローマ時代のお祭りで提供されたパンがルーツ説
サートゥルナリア祭:農業、収穫の神を祀って奴隷とその主人がこの期間だけ表面上役割を入れ替えて振舞った祭。
1年の労をねぎらって、デーツ、いちじく、蜂蜜入りの甘い丸いパンに、繁栄と肥沃な大地を意味する豆を一粒入れ、その豆が入った一切れが当たった幸運な人は、その日「王様の中の王様」と呼ばれ、王のように振舞うことが許されたそう。 その後クリスチャンがローマ帝国の公式宗教となり、異教の祭りとなったサートゥルナリアは忘れられていきましたが、再び習慣を広めるきっかけとなったのはフランスのルイ15世(在位:1715年9月 – 1774年5月)。
説① 勤めて5年目だった奴隷の調理人が、その年のすべての賃金に換えて買ったダイヤモンドを入れて作った丸いパン菓子に感動したルイ15世が、ダイヤモンドを硬貨に代えて広めた
説② 1人の料理人が、当時まだ幼かったルイ15世を喜ばせるために豆の代わりに金の硬貨とルビーを入れたことから硬貨入りが喜ばれるようになり主流となって広まった
乾燥そら豆を入れ、新年の祝福と繁栄を祈るお菓子としてすでにスペインでロスコンを食べる習慣ができていましたが、ルイ15世の叔父にあたるフェリペ5世(スペイン・ボルボン朝最初の国王)が、硬貨を入れる習慣を持ち込んだと言われています。
いつしか硬貨の代わりに陶器製のフィギュアが入れられるようになり、価値を失った豆はしばらく忘れ去られます。
19世紀半ば、再びいつしか豆が入れられるようになり、陶器製のフィギュアが当たった人が「パーティの王様」になり、乾燥そら豆が当たった人は「豆が当たったバカ」と呼ばれつつ菓子の代金を支払うという習慣に変わっていき、現在に至ります。
使用人や奴隷たちが1年で唯一解放される祭りで供されていたデーツ、いちじく、蜂蜜入りの甘いパンは、現在では表面をカラフルなフルーツのコンフィで飾り、生クリームやチョコレートクリームをはさんだ子供たちに人気のお菓子の形へ定着しました。
現在のロスコン・デ・レジェス
ロスコン・デ・レジェスの特徴はリング型で、表面にドライフルーツのシロップ漬け、スライスアーモンド、グラニュー糖、粉砂糖などで飾られていること。パン生地自体は牛乳が入った甘い菓子パン生地で、Agua de azahar(アグア・デ・アサアール、オレンジフラワーウォーター)やラムが風味付けで入ること。中に挟むクリームは菓子店によってさまざまですが、ホイップクリーム、カスタードクリーム、チョコレートクリームやCabello de ángel(カベジョ・デ・アンヘル)と呼ばれる糸かぼちゃを甘く煮たものなどがポピュラー。
手作りパン屋さん系はだんだん飾りがシンプルになっている傾向も。砂糖とアーモンド、オレンジくらいがよく見ます。
スペインでは年明けに菓子店に並び、5日には売り切れるお店も。価格は安いもので15ユーロ~、高いものはサイズによっては30ユーロを超えます。基本材料はシンプルなので、最近では手作りで用意する家庭も。
ロスコン・デ・レジェスのレシピ
2021年作り方改定しました。
コメントを残す