パチャランを知ってスペイン料理をもっと豊かに楽しむ

スペイン料理に携わる方はおそらく全員ご存知であろう、最も日本での認知度&普及度が高い(と思います)スペイン産リキュールはパチャランかと思います。

日本の、少なくとも東京のどこのスペインバルに行っても一本はある(と思います)パチャランですが、もともと食後酒の文化が薄く、特に食後酒のタイミングがないスペインバル業態でパチャランを美味しく楽しめる機会は少なく、実際に楽しむ側の認知度はDonZoco(パチャランダジャレです)かと思います。

ソコで(ダジャレです)本日はパチャランについてまとめてみました。

パチャランとは何ですか?

スペイン北部ナバーラの名物、エンドリーナという見た目はブルーベリーに似た果実をアニス酒に漬け込んだ、アルコール度数25〜30度のリキュールです。

古くから薬代わりに、またその薬効から食事の後に飲まれ愛されてきたお酒です。

現在では、主に昼食の後、また重ための夕食の後に飲まれる、消化を促す食後酒として飲まれています。

古き良きバルやレストランでは、食後に葉巻と一緒にパチャランを楽しむ紳士を多く見かけました(今はできないけど〜!)

エンドリーナとはどんな果実ですか?

エンドリーナはスモモ属スピノサスモモ(エンドリーノ)という棘の多い低木になる果実で、古くからその薬効成分から食用に用いられてきた他、美容のための原料としても用いられてきた歴史があります。

もともとは野生ですが、ナバーラでは1997年から栽培も行なっています。

別名Arañones(アラニョネス)とも呼ばれるのは、手で摘む際に木の棘にひっかかれる(スペイン語で引っ掻くはArañar)から。

エンドリーナの薬効成分はこちら

  • 胃の働きを助け、整腸作用がある
  • 豊富なビタミンCが免疫力を高め、風邪予防や風邪の状態緩和が期待され、妊娠中、授乳中、喫煙者やストレスの多い人におすすめされる
  • 鉄、カリウム、カルシウムを含み強壮効果がある

参照:DASTATU

その薬効から、古くはナバーラの女王ブランカ1世(1385 – 1441)は修道院での療養中にパチャランを飲んだとの記述もあるほか、近代100年ほど前には、パチャランはグラスではなく、スプーンで(風邪シロップのように)飲まれ、喉の痛みや胃の痛みを緩和するために服用する薬代わりだった、とも言われています。

上記薬効に記載したとおり、エンドリーナは妊娠中・授乳中の人にもおすすめされるだけではなく、パチャランは風邪を引いた子供達にも与えられ、甘くて美味しいスプーンひとすくいを飲みたくて仮病を使う子も多かったとか。

パチャランの製品化

600年を超える歴史が確認されているお酒、パチャランですが、製品として生産されるようになったのはつい、この60年ほど。

それまでは各家庭で手作りされるお酒でした。現在でも多くの家庭で手作りパチャランが常備されています。

バカイク(ナバーラ西北の村)唯一のバル店主の女性とエンドリーナ収穫からパチャランの作り方までを紹介するeitb(バスクテレビ)が取材の動画はこちら(02:25〜収穫、07:00〜作り方)

こちらの動画のアナさんのレシピは、1リットルのアニス酒につき300gのエンドリーナを3、4ヶ月漬ける(それだけ、砂糖も入れない)そうです。アニス酒はどれでも良いというわけではなく、パチャラン用アニス酒がいくつかの度数別に用意があるとのこと。今回の動画では度数には触れていませんでしたが、高めのものを使っているそうです。

さて、ナバーラで全ての人に愛されるパチャランが、スペイン全土で愛されないわけはない!と製品化を決意したのが、パンプローナから南西、ほぼログローニョの右上に位置するビアーナという村に住むアンブロシオ・ベラスコさん。1816年からパチャラン作りを行なっていたファミリーです。

1956年、Zoco(ソコ)というブランドでパチャランの商品化がスタート、またたく間にスペイン全土へ販売を広げました。

パチャランといえばソコ、ソコはパチャランの代名詞ともなり、現在日本でも買えます。(輸入元:ユニオンリカーズ)

▼楽天、アマゾンでも買えます。

パチャランの品質統制委員会

1988年、生産者からの要望により統制員会が発足、品質・原料の分量・製造工程のコントロールと全てナバーラにおいて製造されていることの証明により、品質保証マークを持ち、「Pacharán Navarro(パチャラン・ナバーロ/ナバーラのパチャラン)」と名乗るパチャランが市場へ出るようになりました。

1ℓあたり150〜300gのナバーラ産エンドリーナを使用
1ℓあたり80〜250gの糖を含み、その他フレーバー(シナモンなど)は入れない(添加物ももちろん無添加)
全ての製造工程がナバーラ内で行われる

▼2019年現在の認証メーカーは下記6軒


AZANZA / Licores Azanza, S.L.

BAINES / Licores Baines, S.L.

Destilerías La Navarra, S.A.

DZ LICORES, S.L.U.

Hijos de Pablo Esparza – Bodegas Navarras, S.A.

J. Etxabarri Licores Usua SL

Reino Gourmet

パチャランを作っているとこ見てみたい!

上記で紹介した初のパチャランメーカー「ソコ」では、蒸留所見学を受け付けています。

場所はパンプローナとログローニョのちょうど中間あたり。Estellaまでバスで行って、そこからタクシーですかね!(Estellaから10㎞ほど)

蒸留所訪問では、エンドリーナ農園散策、その後パチャランを試飲しながらその歴史や製造方法、飲み方などについてのレクチャー、さらにパチャランを使ったカクテルワークショップもありの盛りだくさんの1時間半で一人5ユーロ。

これは、行くっきゃないやつです。

ソコのホームページ「Visita la destilería」にて お申し込みフォーム(スペイン語のみ)またはホームページ内記載のメール、電話で予約可能です。

個人的には、上記でご紹介したバカイクのバルで、店主さん手作りのパチャランを飲みたいところ。。

パチャランの飲み方(伝統スタイル)

品質が良く、アルコール度数の高いパチャランは本場ナバーラではもともと常温でそのまま飲まれてきました。

現在ではパチャラン自体を冷やしてストレートで飲むスタイルが増えてきているとのこと。

氷を入れてサーブするバル、レストランがほとんどですが、本場ナバーラでは「氷はNO!」品質の良いパチャランは、氷で薄めず、常温またはそのまま冷蔵庫で冷やしてストレートで。

パチャランの飲み方(最新スタイル)

ソコでもカクテルワークショップを行うように、長く「おじさんが飲むお酒」のレッテルを貼られていたパチャランは、現在新しいスタイルでその消費層を広げようと努力しています。

推し推しは、カバ割りまたはベルモット割り。その他練乳を入れてシェイクしたり、ホワイトチョコレートリキュールと合わせてシェイクしたり、なんてのもあるようです。

アニスの香りが好きな人は絶対どの飲み方も好きなはず。

パチャランを楽しむならここ(東京)

1.ぐりすぺ大好き東京代官山のサル・イ・アモールとその系列店銀座ラ・パンサでは美味しい料理と素晴らしい取り揃えのワインに加え、スペインの食後酒がバラエティ豊かに揃っています。もちろんパチャランもある(はず!絶対!)パチャラン以外にも色々試せる食後酒で、スペインの文化を感じてください。

2.パチャランについてもっと掘り下げたい!という人には、東京五反田のシェリーミュージアムを訪れることお勧め!パチャランの歴史やその他お酒の歴史・文化について深く掘り下げてお話しながらお酒が飲めるワンダーランドです。

東京以外は全く知らないぐりすぺ、ごめんなさい!もし東京以外で「パチャランならここ!」があったら教えてくださいねー!

今一番ぐりすぺがおすすめする日本で買えるパチャランはこれ!

ここまでナバーラのパチャランをずっと書いてきたんですが、実はバスク、ギプスコア県(サンセバスチャンがある県)のパチャランが最近日本で手に入るようになったのです・・・そしてそれが、すごい美味しいんです。

すでにナバーラ産はソコを始め美味しいものあるので、ぜひ今試してほしいのはこちら、Patxaran Olañeta(パチャラン・オラニェタ)

良い意味で、手作りっぽい味、フルーティで上品・ピュアな味わいなんです。

上記は東京三軒茶屋のバスク料理店ランブロアさんでいただいたもの。

これはエンドリーナ入りですが、現在日本に輸入されているのは粒なし。

輸入取り扱いは、スペインワイン他の取り揃えに現在大注目の輸入元、ウミネコ醸造株式会社です。(プロ向けの販売となります)

お問い合わせはこちらまで
ウミネコ醸造株式会社 HP
電話番号:03-6278-8306
お問い合わせフォームへ

全国のスペイン料理店のみなさんへこの情報が届きますようにー!

最後に

忙しない日常に疲れてしまっている方、ぜひお近くのスペインバルでがっつり食べて、食後にパチャランを試してみてください。元気でるでるーー!

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