アフエガル・ピトゥ Afuega’l Pitu 

アストゥリアスのチーズ、ケス・アフエガルピトゥについてまとめました。

アフエガルピトゥとは

産地:アストゥリアス中心に位置するグラドスがもっとも多く生産、

他D.O.で認められている産地はサラス、プラビア、ティネド、ベルモンテ・デ・ミランダ、カンダモ、クディジェロ、ラス・レゲラス、モルシン、ムロス・デル・ナロン、リオサ、サント・アドリアーノ、ソト・デル・バルコ、バルデス

アストゥリアスの広い地域で作られ、この土地では最も人気のあるチーズです。

  • ミルク:牛乳(ホルスタイン種、アストゥリアス種またはそのかけ合わせ)
  • 産地呼称:D.O.Afuega’l Pitu
  • 200~800gの円錐台または茶巾型
  • 加熱殺菌していない牛乳、もしくは低温殺菌乳で15日~熟成。

フレッシュタイプは酸がさわやか、熟成が進むにつれてクリーミーさが増し、長期熟成となると表面に白カビが生え、ブリーチーズをもっとねっちりと硬くしたような質感に、酸はほとんど消えます。

プレーンタイプと、ピメントン・ピカンテ(辛いパプリカパウダー)を加えオレンジ色のタイプがあります。

円錐台はカードを練らずに型へ流し込むため、熟成が浅いとほろほろとした質感があります。

一方、茶巾型はカードを練って布で縛り成型するため、もっちりとした質感となります。

どちらも熟成が進むと硬く乾燥していきます。

産地となっている地域はどこも海洋性気候の影響を受け、年中穏やかに雨の降り湿度が高いのが特徴で、牛のえさとなる牧草がふんだんに栄養たっぷりに育ちます。

傾斜が急な丘陵地帯なため、古来から農業より酪農・畜産が盛んな地域でした。

アフエガルピトゥの名前の由来

アフエガルピトゥはアストゥリアスの公用語バブレ語です。

スペイン語でahogar el pollo(鶏を窒息させる)と、ahogar la garganta(喉を絞める)と二通りに訳せ、由来には諸説あり、鶏に与えて熟成具合をみた(熟成が進んでいると硬くなるので鶏が息を詰まらせる)、とか、茶巾型に、まるで喉を絞めるように袋を絞ることからその名となったと言われています。

アフエガルピトゥのルーツ

貧しかったアストゥリアス内陸に点在する小さな農家たちにとって、年中豊かな牧草が生える土地にいて最も見込みのある現金収入は生まれたばかりの子牛を売ることでした。

子牛を生んだ後の母牛から絞る牛乳はそのまま飲まれるか、静置させ分離した脂肪分をバターにし、これも現金収入に充てられたそうです。

脂肪分を取り除いたあとのミルクでチーズが作られていましたが、これはバターが良い収入となったこと、また当時チーズは自家消費用で、プロのチーズ作りの知識がなかったことに起因しています。(現在は脂肪分を分離させず作られています)

作ったチーズはフレッシュでそのまま、もしくはフルーツと共に食されましたが、余った分が放置され熟成が進んだものは、食べてみると脂肪分が少ないため硬く喉にはりつき、窒息しそうになった、というのが現在最も信憑性のある名前の由来だといいます。

アフエガルピトゥにピメントンが入っている理由

ちなみに、ピメントン・ピカンテが加えられたオレンジ色のAfuega’l Pitu rojoは、スペインでは珍しく香辛料を練りこんだチーズです。

この起源にも諸説あり、最も信憑性の低い説は「品質のばらつきを隠すため、状態の悪さがばれないように」だそうなのですが、これも全く根拠がないわけではなく、ピメントンは殺菌の効果と、表面に塗った場合チーズの乾燥を防ぐという効果に加え、すばらしい香りと味わいを加えることができます。「保存性を高めるため」説が悪く理解され伝わった説と言われています。

現在最も信憑性のある説は、このチーズが作られる季節は牛乳の脂肪分が最も高くなる冬、つまりマタンサ(12月ごろに行われる豚の屠殺と腸詰・保存食品作り)と同時期となり、小さな農家の同じ作業場でチーズとチョリソー作り(大量のピメントンを使用する)などが平行して行われていたことにより、なんらかの偶然でミルクにピメントンが入ってしまい、そのまま作業をとめずに作ってみたら結果おいしかった!という偶然説と言われています。

白のアフエガル・ピトゥはフレッシュで食べると酸味が強いのですが、ピメントン入りはその風味で酸味がやわらかくなる効果もあります。

ピメントン入りはアフエガル・ピトゥの産地でも特に鉱山地帯で作られており、厳しい労働を強いられる労働者にとって、ぴりっと辛味のあるチーズはワインに良く合ったということ、当時の労働者にとって、ワインはただ楽しむものではなく、体の痛みを取り、滋養強壮の意味で飲まれていたことから、ワインが進む味わいのピメントン入りアフエガル・ピトゥは腹を満たし、同時に労働者に厳しい労働に耐える元気を与えていたと考えられています。

小さな農家でそれぞれに作られていたアフエガル・ピトゥは、80年代に衛生面での指導から一斉に低温殺菌のみのミルクを使用することとなりましたが、近年では設備が整備され加熱していない牛乳で作る伝統の製法が復活しているそうです。(「Rey Silo」のロゴ入りが加熱していない牛乳で作ったアフエガル・ピトゥの印)

低温殺菌したミルクで作ったものより、ミルク本来の甘みが強く、味わいが深いそうです。

アフエガルピトゥの製法

  1. 22度~32度に温められたミルクに液状のクアッホ(子牛の胃からとれる凝乳酵素)を注ぎ、固める
  2. 15~20時間後にそのまま円錐台の型に入れるか、練った後に布に包み吊るしてホエーをきる。(半日~1日)
  3. 型の上から塩を塗り、型から外す際も塩水をくぐらせる。(茶巾型は練る際に塩を混ぜる場合もある)
  4. 乾燥後熟成室へ

*ピメントン入りは、ミルクの1%の分量

アフエガルピトゥの食べ方

フレッシュはそのまま蜂蜜をかけたり、ほぐしてサラダに入れたり、フルーツと合わせたり。

フレッシュタイプはチーズケーキの材料としても人気です。

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