イディアサバルとは
バスクが誇る羊乳のチーズ、ケソ・イディアサバルは、りんご酒やワインと組み合わせバスクの人々の生活に欠かせない食材のひとつです。
ミルキーで、酸味や辛味が少なく食べやすい穏やかな味わい。
バスク内陸とナバーラの一部で作られているチーズで、中心はその名がついたイディアサバル村。
登録されているチーズ農家は100軒ほど、年間1000トンものイディアサバルチーズがバスクを中心にスペイン全土で消費されています。
湿度が高く、気温も下がりやすいバスク内陸の緑豊かな丘陵地帯で、土着の羊ラチャ種、カランサナ種が放牧されている光景がよく見られます。
ケソ・イディアサバルの規定
1987年に制定された原産地呼称認定D.O.イディアサバルでは下記規定を定めています。
- 非加熱乳100%
- ラチャ種、カランサナ種のミルク100%
- 最低2ヶ月の熟成
- 3kgほどの円柱型。ブロック状にカットされ販売もされるが、スライスしてからの販売は許可されていない。
- 天然凝乳剤を使用
- 製造時加熱は38度まで
- プレスされるハードタイプ
- 脂肪分は最低45%
- スモークタイプとノンスモークタイプ
イディアサバルチーズの栄養価は以下(100gあたり)
- プロテイン: 21 g
- 脂肪分: 33 g
- 塩分(CINa): 1.8 g
- カルシウム: 1.873 mg
- リン: 817 mg
- カロリー: 385 キロカロリー
イディアサバルチーズはノーマルタイプで2~5ヶ月の熟成、スモークタイプはさらに熟成が可能で、独特の風味を味わえます。
ケソ・イディアサバル アフマード(スモーク)
イディアサバルというとスモークタイプがとてもポピュラーなのですが、実は本来はアクシデントで生まれた味わいだそう。
チーズ農家のある一人が、出荷前のチーズを麻袋にくるんで置いていたところ、暖炉で起こした火の煙が移り、スモークされたというのが始まり。
食べてみると意外、香りと味わいに強さと深みが加わり、その後人々から愛されるスタンダードとなったとのことです。
手作りでチーズを作る農家などでは松と桜などの木材が伝統的に使用されています。
大手工場などではオークチップなどを使用するが、手作りの農家で作られる松や桜のスモークと違い色合いが濃く仕上がるのが特徴。
バスクの市場などで複数を見比べて買える状況では、スモークの色の薄めのものを選ぶと良いかもしれません。
イディアサバル村への行き方
イディアサバルはサンセバスチャンから50km弱、豆で有名なトロサを通過してすぐの人口2300人ほどの小さな村です。
車なら1時間ほど、タクシーだと60ユーロほどいくかもしれません。
公共交通手段なら、電車とバスを乗り継いで1時間30分ほどで行けます。
サンセバスチャンからRenfeLoiola駅から1時間に一本出ているBeasain(ベアサイン)行きで終点ベアサインまで、ベアサインから30分ごとに出ているバス(Lurraldebus)に乗り継ぎ13分でイディアサバルで降車。
イディアサバルチーズ博物館
イディアサバルには、Museo del queso チーズ博物館があります。
セマナ・サンタ、7月、8月、9月は毎日開館(11:00-14:00 / 16:00-19:00)
それ以外の季節は土日祝日のみ時間指定で受付、
午前: 11:30 | 12:15 | 13:00
午後: 16:30 | 17:15 | 18:00
平日は10人以上のグループで予約のみ受付、15人以上は割引あり。
ワインとチーズの試食付きで4,50 €
チーズのみ試食なら3,40 €
試食なしなら2,30 €
イディアサバルでのチーズ作りの歴史や、チーズ作りのための昔ながらの器具などの展示をガイド付き(スペイン語)で見学できます。
オプションとして、イディアサバルの訪問可能な農家を紹介してくれます。
ケソ・イディアサバル農家訪問
村の中心から車で15分ほど、山の中腹にある農家でアシエールさんと!
イディアサバルチーズ工房
製造場所は20畳ほどの小さなスペース。湯船ほどの大きさのステンレス製容器がありました。
搾乳されたミルクは一旦5度に冷やされバクテリアを殺し、この湯船に注がれた後再度31度まで温度を上げてクアッホと呼ばれる子羊の胃から取れる天然の凝乳剤を100リットルあたり20g程度加え、30分ほどかけ固めていきます。
ぷるぷるした固形(カード)は刻まれ、型に入れたものをプレス(6~7時間)、その後塩水に12時間ほど漬けた後1日乾燥。そこから2ヶ月以上の熟成を進めていきます。
製造スペースに隣接している貯蔵スペースには、香り高いイディアサバルがぎっしりと詰まっていました。香りだけでワイン飲めます。
イディアサバルの羊たち
この製造スペースをでるとすぐ、羊たちの暮らす羊舎がありました。
搾乳スペースはまさに製造スペースのすぐ横、ミルクは絞られてすぐに製造スペースへ運ばれるよう直結しています。
工場生産と手作りのイディアサバルチーズの違い
アシエールさん曰く、工場生産のチーズと、手作りのチーズの大きな違いとは、
羊の生活環境、そしてミルクの新鮮さ。
タンクに入れられ、数時間トラックで移動するミルクと、絞られてすぐ隣の部屋で加工されるアシエールさんのチーズは、根本から別モノだそうです。
愛をこめて育てられる羊たちは常時50頭程度、餌にも最新の注意を払い、栄養価の高いミルクを出すよう育てています。
家の裏側に回ると、鶏がかしましい。壁にはモスカテルがたわわな実をつけていました。アシエールさん家ではほぼ自給自足だそうです。
産みたての卵とイディアサバルチーズの朝食、デザートには甘いモスカテル。最高ですね!
家の裏手に広がる美しい丘陵地帯の緑を眺めながら、土着のバスク犬が元気に羊を追う姿を見る。
「贅沢な生活だよ」と語るアシエールさん、憧れます!
イディアサバルチーズ試食
ゲストルームに入り、お楽しみの試食タイムです!
ゲストルームには美しい家族写真のパネルがたくさんで、美術館のよう。
こちらはイディアサバルチーズ用のナイフです。
早速の試食、ノーマルタイプ、スモークタイプ、熟成別タイプ。アシエールさんの言う通り、ミルクの香りが劇的に濃厚。香りも素晴らしく、本当に美味しかったです。贅沢・・!
試食はリオハワイン付き!
農家で直接チーズが買える
アシエールさんが作ったさまざまなイディアサバルのチーズの他に、出荷できない形崩れなどのイディアサバルをクリーム状にしてびんに入れたスプレッドや、手作りの羊のチョリソー(買いました)、
Etxeko(自家製)sagar(りんご)goxoa(甘いの)ということで、りんごのジャムなどもありました!
こちらでお土産を買って、見学代(一人9ユーロ)をお支払い。
すごく良い体験になりました!サンセバスチャンからはちょっと乗り継いで行く形になりますが、チーズ好き、バスクの田舎をみてみたい人はぜひぜひ!
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