ナバーラ

ナバーラのワインと食

いまいちナバラって、食の華やかな表舞台では目立たない州ではあるけれど、実はその豊かな大地で収穫される野菜類にかけてはスペイン№1と言われるほど。その中でもジューシーなアーティチョーク、極厚ホワイトアスパラガス、とろけるピキージョピーマン、しゃっきしゃきの若レタスはナバラの四大野菜ではないでしょうか。優れた食材を有する地に、美食がないわけがない!

(ナバーラの料理は)組み合わせが意外なものが多い

山に囲まれ、流通の発達も遅かったのだろう

ナバラ料理は、地の食材+保存食を工夫して組み合わせた結晶

環境に恵まれすぎると、料理文化は生まれない

pamplona(3)・・・「料理、食材、観光、その他」文中より

川マスとハモンセラーノ、アーティチョークとあさりの組み合わせなどはその筆頭。

ではなぜ川マスとハモンセラーノだったのか。

かのヘミングウェイが「ナバラで釣った川マスは人生最大の釣果だった」と語ったほど、豊かな水源で豊富な川マスを育むナバラの地。スペイン各地の川で獲れるサクラマスと違い、ナバラの川マスは小ぶりで、脂が少なくさっぱりとした味わい。キラキラと輝く銀色に黒と赤の斑点があるのが特徴。

作り方:川マスは頭をつけたまま内臓を取り、洗って水気を取る。塩したら腹にハモンセラーノのスライスを詰めて爪楊枝で留める。フライパンにオリーブオイル(ラードを使えば昔ながらの味に)を熱し、にんにくとベーコンを炒める。にんにくが色づいてきたらベーコンとともに取り出し、川マスの両面をこんがりと焼く。取り出しておいたにんにくとべーこんを添えて提供する。

参考文献「Un Paseo Gastronomico por España」によると、Trucha(トゥルッチャ、川マス)の連れるピレネーの山間では物資の流通が皆無に等しく、オリーブオイルは貴重品。豚や獣を解体した際に出る脂が調理の際の油脂代わりとして使われていた時代、もちろん川で釣れる瑞々しい川マスの調理にもラードや獣脂が使われていた。その後、時とともに物資が豊かになり、ベーコンやハモンセラーノ(白豚の生ハム)を加えたところ川マスの淡白な味わいにハモンセラーノの塩分と円熟味がマッチして定番となったとか。

まさに流通の面で恵まれない環境から生まれた料理だったんですね。

ナバラ野菜のビーナスと称されるホワイトアスパラガス。

スペインのスーパーに行くと、缶詰・瓶詰めの棚にはずらりとホワイトアスパラガスの水煮が並んでいます。ナバラ産は一発で見分けられます。何せナバラ産は高い!値札を見て一番高いのが品質の高いナバラ産ホワイトアスパラガス。一口食べれば納得します。優しいクリーム色の太い肉厚な身にナイフを入れると、引いたり押したりする必要がなくそのまますっと皿に着く。筋がとっても柔らかいんです。口に入れるとその柔らかい筋がほろりとほぐれ、独特の甘みが口中に広がっていきます。

このホワイトアスパラガスの提供方法はいたってシンプル。マヨネーズを添えるか、オリーブオイルと白ワインビネガーをかけるか。

マドリードのある星付きレストランのメニューに、「Esparrago blanco con mayonesa tibia(ホワイトアスパラガスと暖かいマヨネーズ)」という料理がありました。

冷たく冷やしたホワイトアスパラガスに、湯煎してすこし泡立ててムース状になった暖かいマヨネーズソースがかかっているだけの一皿。

アスパラガスがデザートのように甘くて柔らかくて、まろやかなマヨと最高なのです。

 

もうひとつ。春にナバラを訪れたらぜひ試してほしいのがCogollos de Tudela(コゴージョス・デ・トゥデラ)

10cmほどの小さなレタスの一種、これは芽レタスと和訳してもいいんじゃないでしょうかどうでしょうか。

このコゴジョスは、半分に割ってオリーブオイルとビネガーをかけ、アンチョビと共に供されることが多いです。

下記はビナグレッタをかけたコゴージョさん

ピミエント・デル・ピキージョを生で食べない理由

Pimiento del piquillo(ピミエント・デル・ピキージョ)と言えば、スペイン全土で様々な料理と組み合わされる食材です。ナバラで採れる8cmほどの小振りで肉厚の赤ピーマンを炭焼きにし、手作業で皮と種をとったものが缶詰・瓶詰めで売られています。

最もポピュラーな料理は、詰め物をしたPimiento del piquillo relleno (ピミエント・デル・ピキージョ・レジェーノ)でしょうか。

 

詰める具は様々。ツナをマヨネーズで和えた簡単なものから、蟹や海老、またはハモン入りのベシャメルソース、イカの墨煮など。そのまま食べたり、具を詰めたものに軽く衣をつけてフリットにしたりもします。

また刻んで煮込みに入れたり、スライスして肉料理に添えたり。バカラオを塩こしょうだけでソテーしたものにピキージョの真っ赤なピューレをかけたものもおいしい。

ところでふと気がついたのは、ピミエント・ピキージョの生食を見たことがない事実。実はピキージョ種は生だととっても苦いんです。その苦味が、炭焼きにするとあの芳醇な甘みに変わるという、これがピキージョ種の最大の特徴でしょうか。

 

スペインの他地域や、ヨーロッパ全体でも「食用」としては忘れられつつある「Cardo(カルド、アザミ)」も、ナバラでは積極的に栽培されています。

アーティチョーク(和名:朝鮮アザミ)に良く似ていますが、アーティチョークが蕾の芯部分を食べるのに対し、カルドは茎部分を食べます。そのままオリーブオイルとビネガーをかけたり、ハモンと炒め煮にして調理されます。

見た目は紫がかったセロリですが、味はほんのりと苦味のあるアーティチョークと似ています。スペイン全土でも水煮が売られていますが、ぜひナバラで試したい野菜のひとつ。

ナバラとひつじの関係

ピレネーの山間、猟師がラードで川マスを焼いていた時代。ナバラの北西のロンカルの丘に点在する閉ざされた貧しい村々で大切に飼われていたひつじの肉やミルクは、大事な栄養源でした。

松やブナが生い茂る森で天然のハーブを食み育つ山羊が出す濃厚なミルクで作ったナバラのチーズといえば、Queso Roncal(ケソ・ロンカル、ロンカルチーズ)。若いものはぴりっとした刺激があり、こってりとした味わいが特徴。熟成が進むごとに香りが強くなります。

また、羊のミルクを凝固させたデザートも良く食べます。
伝統のレシピは、木の器に焼けた石を入れたところにひつじの生乳を注ぎ、約38度ほどに温まったところへ凝乳剤を入れて良く混ぜたら、器に移して冷やし固めるというもの。*また、ひつじの生乳に凝乳剤(生まれたての子羊の胃から採れる)を加えて固めたCuajada(クアハーダ)の味わいは、牛乳のそれより濃厚で、独特の風味が後を引きます。

焼けた石が木の器を焦がすことで、スモーキーな味と香りがミルクに移り、例えるなら酸味のないスモークチーズのような味がします。

良く、クアハーダをヨーグルトに例える場合がありますが、クアハーダはミルクを発酵させずにそのまま固めてあるため、ヨーグルトとは全く別。チーズとも違います。言うなら砂糖の入っていないミルクプリンでしょうか。

本当のクアハーダ好きは何もつけずにそのまま食べるらしいですが、甘くもしょっぱくも無いミルクの味です。はちみつをかけたり、グラニュー糖をかけて食べます。

友人と行ったナバラ北部のレストランで初めて「Cuajada afumada de leche de oveja(ひつじのスモーククアハーダ)」を試しましたが、一口目にがつんとくる強いスモークの味わいに驚きました。スモークサーモンくらいのはっきりとしたスモーキー感。そして牛乳のクアハーダよりこってり、例えるなら生クリームより少し薄めの脂肪分といった感じ。ひつじのミルク独特のくせは好き嫌いが別れるかもしれませんが、不思議な味、後を引きます。

クアハーダ
クアハーダ

ロンカルチーズとクアハーダについて詳しくはこちら

チリンドロンはめでたい食べ物

鶏や子羊、豚肉の「チリンドロンソース」は、ナバラをはじめとしてリオハ、アラゴンでも定番の料理。このチリンドロン、ナバラやリオハ特産の乾燥赤ピーマンを水で戻したものと緑ピーマン、玉ねぎ、トマト、白ワインなどで作るソース。ソテーした肉を絡めて煮上げます。

このチリンドロンは昔々、田舎の職人が工場へ仕事を求めに行った際、未来の同僚へ振舞った料理と言われ、今ではナバラを中心としたスペイン北部で何かの「契約完了」時に用意されるおめでたい料理とされています。といっても、ナバラではポピュラーな料理、「契約完了」しなくても、多くのレストランがオンリストしています。

Chuletón(チュレトン)は気合を入れて

牛や豚、子羊のステーキをスペイン語でChuleta(チュレタ)と言いますが、バスクやナバラなどでポピュラーな”チュレトン”は、「大」チュレタの意味。成牛のサーロイン部分を分厚く切って、網で炭焼きにしたもので、レアに仕上げるのが特徴。

ナイフとフォークで一生懸命切って口に運び、溢れる香ばしい肉汁と歯ごたえのある「まさに肉!」の味、なんだか食べているうちに野生的な気分になってきます。顎も鍛えられて唸りたくなるのは私だけでしょうか。

チュレトン
チュレトン

のんびりしていると冷えて脂が固まってくるので、運ばれてきた熱々を物も言わず噛み千切るのがコツ。

合わせるのはやっぱりナバラの軽めの赤でしょうか。口の脂がさっぱり洗い流されて、気づくとフォークがもう一片の肉を刺している、そんな状況を楽しむために、お腹をすかせて気合を入れてトライ!それがチュレトンです。

つまり、ナバラを楽しむならこれを選ぶ

D.O.Navarraの爽やかなロゼ または 軽めの赤

 

前菜:ピキージョの詰め物 または ホワイトアスパラガスのマヨネーズ添え または コゴージョのアンチョビ添え

一皿目:ナバラの野菜たくさんミネストローネ または アーティチョーク芯とあさりの煮込み またはアザミ(Cardo)とハモンセラーノの煮込み

二皿目:川マスとハモンセラーノのソテー または 牛肉の炭焼き(chuletón、チュレトン) または 子羊のチリンドロン煮

デザート:ロンカルチーズのメンブリージョ(マルメロのジャム)とくるみ添え または スモーククアハーダ

食後酒:パチャラン(アニス酒にこけももを漬けたリキュール)

カフェとチョコレート

完璧!!!!!

「スペイン料理なんて、ニンニク、トマトで肉煮込んだやつだろ?!」

そんな人がいたら

「お前、スペインで牛に追われてから言え」

と教えてあげよう

pamplona(3)・・・「料理、食材、観光、その他」文中より

その通り!!!

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