FOOD

ロンカルチーズとクアハーダ

ロンカルチーズとクアハーダ
ナバーラ、ロンカルの丘

ロンカルの丘 ”Turismo de Navarra”より

ナバーラ、ピレネーの山間。

猟師がラードで川マスを焼いていた時代。

ナバラの北西のロンカルの丘に点在する閉ざされた貧しい村々の農民にとって、羊の肉やミルクは大事な栄養源でした。

松やブナが生い茂る森で天然のハーブを食み育つ羊が出す濃厚なミルクで作ったナバーラ産のチーズといえば、Queso del Roncal(ケソ・デル・ロンカル、ロンカルチーズ)。

1981年にスペインで初めて原産地呼称の認定を受けたチーズです。というのも、ロンカルの丘以外のピレネー山脈周辺でも伝統的に羊乳を使用したセミハードチーズがポピュラー。しかし、ロンカルの丘の酪農家たちが家族だけに代々受け継いできたピレネー最高のチーズ、ロンカルチーズに品質の面で及ばない類似品のチーズたちに「ロンカル」の名を付けて販売する販売者が出てきたためです。スペインで一番有名なチーズ、マンチェゴチーズの原産地呼称認定は1996年のことですから、その15年前にはロンカルチーズの品質を守る強い働きがあったと考えられます。

ロンカルチーズは、年間で12月から7月の間に生産されます。

夏の間に瑞々しいピレネーの草原で草を食んだあと、冬と春の間に活動をやめる羊たちの乳が一番濃い期間だからです。

絞られた乳は低温殺菌せずに生の状態のまま動物性凝乳剤(レンネット)を加え、分離したカードを型に詰めて圧縮、その後最低で4ヶ月の熟成を経て出荷されます。

若い熟成のロンカルチーズはミルクの香りが豊かで、食感もこってりとした脂質の高いチーズ。

熟成が進んでいくごとに内部は結晶化していき、ぴりっとした刺激が強くなります。

ロンカルチーズは、ナバーラの地品種であるLatxa(ラチャ種)とNavarra(ナバーラ種)の乳のみから作られます。原産地呼称認定よりずっとずっと前、貧しさゆえに品種問わず頭数を増やす農家を規制し、二種の地品種を守る動きをしていたと同時に、放牧する羊の頭数をコントロールすることでピレネーの自然をも守るという当時では厳しく前衛的な決断が、結果としてロンカルチーズの高い品質、そのチーズを生む豊かな大自然を現在まで守ることとなりました。

8月にはFeria del queso del Roncal(フェリア・デル・ケソ・デル・ロンカル、ロンカルチーズフェア)が行われ、地元の生産者たちがそれぞれのロンカルチーズを持ち寄り品評を行います。



ロンカルチーズと並んで出されるものにCuajada(クアハーダ)もしくはバスク語でGaztanbera(ガスタンベラ)と呼ばれるものがあります。各農家や家々、レストランなどで手作りで用意され、主にデザートとして食べられる、羊乳をレンネットで固めた甘くないミルクプリンのような食べ物です。

伝統のレシピは、バスク語でKaiku(カイク)と呼ばれる持ち手の付いた木の器(本来は絞った羊乳を運ぶ器)に赤く焼けた石を入れたところにひつじの生乳を注ぎ、約38度ほどに温まったものを器に移して凝乳剤で固めるというもの。直接火にかけることができない素材のために、焼けた石を使い生乳を温めたのが始まりですが、焼けた石が木の器を焦がすことで、まるで燻煙したような味と香りが乳に移り独特な味わいに。

カイク

カイク

現在では人工の植物性凝乳剤を使う場合が多く、また羊乳ではなく牛乳を使用したりする変化版も。ナバーラ以外の地域では牛乳のクアハーダのほうがクセがなく、ポピュラーに食べられています。どちらのクアハーダも、好みでそのまま食べる人もいれば、グラニュー糖や蜂蜜、ローストしたアーモンドや胡桃を添える場合もあります。

また、スペイン全国のスーパーでは水で溶かすだけで作れる「クアハーダの素」も売られていたり、ヨーグルト売り場には素焼きの器に入れられラベルが付いた既製品も並んでいます。

クアハーダ

クアハーダ

日本では既製品は売られていませんが、スペイン料理店では自家製のクアハーダを出しているところも。それでも多くは、牛乳で作っているところがほとんどだと思います。羊乳のオリジナルは、材料さえ揃えばとても簡単に作れます。38度ほどに温めた羊乳を、レンネットを3滴ほど入れた150ccほど容量のある器に流し込むだけ。あとはかき混ぜずに常温で30秒ほど待つと固まります。(日本では粉末のレンネットが手に入りやすいかもしれません。使用法は製品の説明を参照してください)口の中でさらっと溶ける、でも羊乳独特のクセとこってりとした味わいのクアハーダ、機会があればぜひ。

ロンカルチーズに合わせるワイン

こってりとしたミルキーな味わいが特徴のロンカルチーズにはやはりエレガントなナバーラワインを。



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