バスク内陸のお菓子屋さんで絶品に出会った

こんにちは!北スペイン料理研究家のEriko(@erikogreenspain ) です。先日10年ぶりに訪れたバスク地方、サン・セバスティアンから南西に下った小さな町、ベアサインで絶品のお菓子に出会いました。

ロスキージャス・デ・サン・ブラス

バスク内陸のお菓子屋
ロスキージャス・デ・サン・ブラス(ベアサインの菓子店にて)

スペイン語ではRosquillas de San Blasと書きます。サン・ブラスのドーナツの意味ですが、揚げたドーナツではなく、リング状の焼き菓子です。

バスク内陸のお菓子屋

アニスが効いたリング状のビスケット生地に、白い糖衣がかかったこのお菓子にはSan Blas(聖ブラシウス)の名がついていて、本来はこの聖人の日である2月3日に食べられます。

このサン・ブラス(聖ブラシウス)はアルメニアの司教で医師でもあり、人間と動物の両方に奇跡的な癒しの才能を与えたことで知られているとのこと。

特に、喉に魚の骨を詰まらせた子供の命を救ったとして喉の守護聖人として知られ、2月3日のこの聖人の日には喉の健康を祈るようになります。

特に2月は、寒さのせいで喉が痛くなる人が多く、綿を縒ったひもを喉に巻き、喉に痛みが出るのを防いだり、風邪を引くのを避けたりする習慣がありました。

そしてより喉を守るために聖人に捧げて作った、喉風邪に効くアニスシードをたっぷり入れた美味しいお菓子は、聖人の祝福の儀式の後に各家庭で食べられるようになり、この季節の味になったと言われています。

(しかし、このお菓子の起源については時期も発祥地も不明とされています。)

▼Torta de San Blas(トルタ・デ・サン・ブラス)

次第にお祝いの席などでも定番となり、現在では特にギプスコア県南西のゴイエッリ、海側のデバ、そしてビスカイア県の南東部、ドゥランゴ周辺では広く食べられているお菓子だそうです。

▼地図はギプスコア県のゴイエッリ地域を赤線で囲ってあります。この地域を中心に北に向かい海際にデバ、内陸をそのまま西に進むとビスカイア県のドゥランゴがあります。

参考:トロサの菓子店ECEIZAの記事「DE DÓNDE VIENE LA TRADICIÓN DE LAS ROSQUILLAS DE SAN BLAS?」より

絶品サン・ブラスのドーナツがあったのはこの菓子店

今回ベアサインを訪れる際に、行きたいお店を2軒調べていました。そのうちの1軒が、このサン・ブラスのドーナツを扱うPastelería Garionaでした。

ベアサインのメイン通りとなるKale Nagusia(ナグシア通り)に面した小さなお菓子屋さんです。

Pastelería Gariona 

住所:Kale Nagusia Kalea, 35, 20200 Beasain, Gipuzkoa

バスク内陸のお菓子屋
Pastelería Gariona外観

店頭にはこの菓子店の名物であるサン・ブラスのドーナツが並んでいます。

バスク内陸のお菓子屋

バスク内陸のお菓子屋

店内に一歩踏み入れると、菓子店によくあるバターやチョコレートの香りにも勝って、心地よいアニスの香りに包まれました。

目も鼻も、肺までが幸せ。

バスク内陸のお菓子屋

飾りっ気のない、それでいて手作りならではの上品で美味しそうなお菓子の数々。普段食べしたいラインナップがずらり。

バスク内陸のお菓子屋

小さなお店ですが、地元の人がひっきりなしに来店する「町の憩いの菓子店」の様相です。

スペインの朝食といえば、のマグダレナ(マドレーヌ)も山盛りに。

バスク内陸のお菓子屋

「(ロスキージャス・デ・サン・ブラスは)本来は2月3日に食べるお菓子だけど、うちでは年中作っているの

お店のオーナー、Nekane(ネカネ)さんが笑顔で教えてくれました。

このお店は1985年にこの地に初めてのベーカリーショップとしてオープンし(それまで、地域では田舎のパン工房が点在するだけでした)、その際にこの地域では初めてトルタ・デ・サン・ブラスの形を変えたドーナツ版を作り始め、それが名物に。

今ではこのお菓子が多く食べられている地域の一つでもあるゴイエッリ地域の中心の町、ベアサインでこのお菓子を産んだ、パイオニアの菓子店だったのです。

バスク内陸のお菓子屋

参照:EL DIARIO VASCO «Hace 35 años fuimos pioneros en Beasain elaborando las ‘opilas’ de San Blas»より

地元のシェフも絶賛の食感と味わい

この日のおやつにいただきました。

想像していたよりしっとりふわっとしていて、口の中に爽やかなアニスが香ります。

決してしつこくなく、上にたっぷりとかかった糖衣も上品でした。

バスク内陸のお菓子屋

見た目から、クッキーっぽいのかなと想像したのですが、キメの細かい柔らかな質感、言うなれば、高級バームクーヘンのようなしっとり感でした。

バスク内陸のお菓子屋

「ここのは美味しいね!」と地元のおじさんもニッコリ驚く、絶品の名物菓子でした。

後日談

購入した日の午後のおやつでお裾分けした数個以外は、そのままリュックに仕舞い込んでいました。

実は6月にしては冷え込んだブルゴス→バスクの旅程で喉の痛みを感じ始め、ガリシア方面へ向かう夜行バスで体調が劇的に悪化、食欲もなく、買い物も行けずに一人初めての町で(おそらく熱も出て)寝込んでいるときに、サン・セバスティアンの薬局で買った喉の痛み止めを飲む際に「何か食べなくては」と、唯一持っていた食べ物だったこのお菓子を食べ、薬を飲むことができました。

昔々、喉に魚の骨が刺さった子供の命を助けた喉の聖人のお菓子に初めて出会い、喉の痛みを抑えるために食べるとは、なかなかできた話だと、我ながら思いました。

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