バスク内陸で黒豆が光っていた 〜アルビアス・デ・トロサ〜

こんにちは!5年ぶりのスペイン旅行から帰ってきて1ヶ月経つのに全く本の執筆が進まない、夏バテ中のEriko(@erikogreenspain ) です。

寒過ぎて風邪をひいた6月の北スペインへ今戻りたい・・

さて、今回の旅行ではガリシア地方がメインでしたが、友人と会うために1日バスクにも行きました。ブルゴスからバスでベアサイン→オルディシアの市場を目指し、買い物を済ませてその後、ランチ前に立ち寄ることができたのがバスクの黒い宝石Alubias de Tolosa(アルビアス・デ・トロサ、トロサ豆)の品質統制委員会でした。

バスクの黒い宝石、トロサ豆

バスクの黒い宝石、アルビアス・デ・トロサ

2024-05-27

トロサに、トロサ豆を見に行った

トロサの町外れにある、トロサ豆の品質統制委員会に連れていってもらいました。

牛肉、お菓子、そしてお豆。美味しいものがたくさんある街で、毎週土曜に青空市が開かれることも有名です。

オルディシア

オルディシア、水曜にバスクにいるなら必ず行って

2024-07-21

町外れにひっそりと佇む品質統制委員会

バスク語で、トロサ豆はTolosako Babarrunaと呼びます。

決められた地域で、決められた高い品質のお豆にだけ付けられるトロサ豆の証シール。

品質統制委員会のロゴ+「バスク品質」である証明ともなるEUSKO LABELもちゃんと入っています。

サンセバスティアンでも、グルメショップで黒豆を売っていることはありますが、このマークがついているものであれば安心です。すべてのパッケージにナンバリングもされています。

中身が見えるように一部プラの覗き穴がついた1kg用の布袋。これに入れて出荷されるんですね!

スペインのどの農作物にも言えるのですが、品質統制委員会のマークが入って販売される商品は、そのパッケージの量についても規定があるものが多いです。

このトロサ豆の場合は、1/2kg、1kg、3kgまでの袋で、正しくラベルが縫い合わされて販売されることが決まっています。

現在の価格は1kgで15ユーロです。

日本では乾燥した豆を一晩浸して翌日煮る、という考えが一般的ですが(少なくとも私はおばあちゃんにそう教わりましたが・・)、スペインのお豆は収穫したその年に消費する傾向があり、トロサ豆もその年の収穫分であれば水に浸すことなくそのまま煮ることができるのも特徴かもしれません。

そしてトロサ豆のプロ(作り手や統制委員会の選別を行う人など)になると、なんと豆をすくって落とした時の音で、その豆が今年の豆か、古い豆かわかるそうです!

すごい・・・・

現在トロサ豆を作っている地域マップ。28の地域で年間3万kgほどのアルビアス・デ・トロサが栽培されています。これは、行く前の下調べ「バスクの黒い宝石、アルビアス・デ・トロサ」でも書いたのですが、全盛期(20世紀初頭)の1割にもならない栽培量になります。

バスクの黒い宝石、トロサ豆

バスクの黒い宝石、アルビアス・デ・トロサ

2024-05-27

トロサ豆の栽培がなぜガクッと減ってしまったか聞いてきた

今回品質統制委員会に連れていってくれた「トロサ豆の神様」ロベルトさん。

1968年ベアサイン生まれ、1992年から2017年までトロサの名レストラン「フロントン」で責任者を務め、現在はチャコリワイナリー「HIKA」併設の同名のレストランを監修している、トロサ豆と地元を愛し、トロサ豆と地元に愛されるシェフです。

豆の選別台で、どのように選別するかデモンストレーションしてくれるロベルトさん。実際に豆が流れている時には音がすごいので、みなさんヘッドフォンをつけて音を遮るそう。
掲示されているボードから、選別の様子。一粒一粒丁寧に選り分けられます。

トロサ豆が20世紀初頭に徐々に作られなくなった理由について下調べしていた内容としては、「流通網の充実により食材が豊富になったこと、トロサ豆を栽培・収穫するよりもより簡単に栽培できる農作物へ畑がどんどん切り替えられたこと」となっていました。

この話についてはおよそ、ロベルトさんもその通りではないか、としながら、とはいえ上記の文章の場合は「農業の効率化」のような前進に聞こえるが・・と、追加で詳しい話も教えてくれました。

トロサ豆が最もこの地域で食べられていた18世紀〜19世紀終わりまで、農家ではトロサ豆しか食べられない状態がずっと続いていたと言います。

週のうち6日トロサ豆を食べる毎日。1日だけはパンとスープ、他の日は来る日も来る日も、そこにあるトロサ豆を食べていたそうです。

19世紀終わり、バスク内陸に鉄道が通り、海側の食材や他地域の食材がより手軽に、安価に手に入るようになった時、人々は豆から解放されたように豆作りをやめ、他の農作物を育てるようになったそうです。

つづめて言うと先述の「流通網の充実により食材が豊富になったこと、トロサ豆を栽培・収穫するよりもより簡単に栽培できる農作物へ畑がどんどん切り替えられたこと」なのですが、

その背景には、来る日も来る日も豆しか食べるものがなかった貧しいバスク内陸の人たちの苦労と、決してただの産業的な改革ではなく、合理化でもなく、人が豊かに暮らしたい、そう願う過程の中での自然な取捨選択があることが見えました。

実際にロベルトさんのおばあちゃんは、週7日お豆を食べていたそうです。

他地域の、例えば土着ぶどうを生産性アップや作業効率化のためすべて引っこ抜いてしまった、といった地域の場合、山の中に残っていた貴重な土着ぶどうをいかに復興させ今後増やして行くか、という取り組みが盛んな場合もありますが、

そういった事情とはまた違う減り方をしていることがわかりました。

バスクの黒い宝石、トロサ豆をいただいてきた

ロベルトさんが炊いたトロサ豆を味見

この地域では、トロサ豆を見ると顔を顰める年配の方もいるそうです。それしかなかった時代があったこと、これがあったから今があること。

ほっくり素朴なお豆の味を口いっぱいに感じながら、複雑な思いが交差します。

少量の塩だけで炊いたお豆は、とろりと滑らかな舌触りが特徴的です。

バスク内陸を支えた栄養ですね!

11月には豆祭りFiesta de la alubiaもあって、豆の品評会、そしてその品評会でベストに選ばれたお豆を使って炊いたお豆を楽しんだり、地元の農作物や畜産の製品を購入したり、ダンスや歌のイベントが開催される楽しい土日を過ごすこともできます。

次回は、11月に行きますか・・!

バスクは内陸が面白い・・・!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です