ガリシアのオルッホ(ぶどうの蒸留酒)

オルッホ Orujo

Aguardiente de orujo アグアルディエンテ・デ・オルッホは、スペインの蒸留酒です。

  • オルッホとは
  • ガリシアのオルッホの歴史
  • ガリシアのオルッホ今昔
  • 原産地呼称
  • ガリシアのオルッホの種類
  • ケイマーダ

オルッホとは

Orujo(オルッホ)は元来、ワインを醸造する過程で出る”ぶどうの搾りかす”(皮や種)を意味しますが、現在は蒸留酒の代名詞ともなっています。

発酵後の搾りかすはスペイン語でHollejo(オジェッホ)とも呼びます。また、ガリシア地方ではオジェッホをBagazos(バガソス)とも呼びます。

黒ブドウのオジェッホ(リベイロで撮影/2016年11月)
黒ブドウのオジェッホ(リベイロで撮影/2016年11月)
白ぶどうのオジェッホ(リベイロで撮影/2016年11月)
白ぶどうのオジェッホ(撮影・同上)

この搾りかすを蒸留し作られるスピリッツ(Bebida espirituosa ベビーダ・エスピリトゥオサ)が、Aguardiente de orujo アグアルディエンテ・デ・オルッホ、”オルッホの蒸留酒”で、単にオルッホとも呼ばれます。

オルッホは、スペイン全土で愛され主に食後酒としてテーブルに載ります。スペインで最も古くからオルッホを生産していた記録が残っているのはカンタブリア地方(記録では14世紀から)ですが、オルッホの文化が最も根付き発展したのはガリシア地方で、オルッホの原産地呼称もあります。(la denominación específica Orujo de Galicia)

カンタブリア地方、ガリシア地方の他にオルッホの生産が盛んなのはレオン、また、サモラ北部、ラ・マンチャやアンダルシアの一部でも生産されています。

ガリシアのオルッホの歴史

ガリシアでのオルッホ生産は17世紀ごろの記録から確認できます。各地修道院の依頼により錬金術師が蒸留知識を伝えたのと、またサンティアゴ巡礼の道をたどって技術が流入したと言われています。

オルッホはガリシアの厳しい環境で働く漁師や農家の人々の生活に深く根付いています。

1杯のオルッホは暑い夏には体をリフレッシュし、寒い冬には体を温め、また悲しみを和らげるとも言われています。一日を元気に過ごすため「朝に一杯のオルッホ」の習慣がある村もガリシアには多く残っています。

オルッホは昔から薬代わりにも飲まれてきました。頭痛や虫歯の痛み、風邪予防、捻挫やリュウマチの痛みに効くと信じられてきました。

また、農家ではミルクを出さなくなった牛の乳房にオルッホをつけマッサージするという方法もよく用いられていました。

ガリシアのオルッホ今昔

ガリシアのオルッホは、中世以降発展しワイナリーやぶどう栽培農家、個人の家庭でも盛んに作られるようになりました。

専門家による製造ではなく、自己流の蒸留で毒性の強い蒸留酒が出回り健康被害や死に至るケースが増えたせいもあり、ガリシアでは19世紀終わりに蒸留酒の製造が一律禁止となります。しかし、政治的な情勢から数年後(1911年)には非常に厳重な地域的・物的制限(ある期間のみ蒸留を許可し、それ以外の期間は各行政が蒸留機器の一部を預かる)を設け、再び蒸留酒の製造が一部ガリシアで許可されることとなりました。

またこのときの制度で、ガリシアではPoteiro(ポテイロ)またはAlambiqueiro(アランビケイロ)と呼ばれた蒸留職人が機器を携行しワイナリーなどを訪問し蒸留酒を製造することを認め、この職人を管理することで生産量を把握、税制も確立されました。

これを機会にガリシアでの蒸留酒製造は発展し、専門職人による質の高いオルッホの生産が盛んになります。

それから半世紀以上経った1985年、新制度により携行機器による蒸留が全面禁止に、蒸留酒製造は固定設備のみ許可となり、ガリシアの秋(11月~)の風物詩とも言え、ガリシアの伝統となっていた、職人が機器を持ち込み蒸留するオルッホは姿を消しました。

上記EU統合のための法改正以来、多くのワイナリーは蒸留酒製造メーカーに絞りかすを持ち込み蒸留依頼、または購入した絞りかすでメーカーが作った蒸留酒に自社ラベルを貼ることなどで対応したため、ガリシア産蒸留酒の品質は均一になったものの、個性を欠いた工業的な製品となっていきました。

ただ今でも、ガリシアの伝統の蒸留酒を作り続けるワイナリーがあります。

サラテ

今では三軒のみとなった、自社で蒸留酒を生産するリアスバイシャスのワイナリーのひとつはZarate(サラテ)、リアスバイシャス、サルネスで伝統のアルバリーニョワインを生産する小規模のワイナリーながら、地元では古い歴史を持つ名門です。

自然農法を実践する美しい自社畑の隣の庭の中に、小さな小屋があります。

サラテ リアス・バイシャス

サラテ リアス・バイシャス

そこは、サラテの蒸留小屋となっています。

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蒸留小屋

中にはガリシアの職人が作った銅製の小さなアランビケが2台設置されていました。

サラテの銅製アランビケ 2016年11月撮影 サラテの銅製アランビケ 2016年11月撮影
11月、昔からガリシアの蒸留酒を作り続けてきた職人がワイナリーを訪れ、昔ながらの高品質、手作り蒸留酒を自社の絞りかすのみで作り上げます。
品質の高いガリシアのオルッホの定義ともなる「頭としっぽは使わない」蒸留の過程で最初に管を伝わり落ちる「頭」は、荒々しく、最後にでる「しっぽ」は風味が落ちる、サラテでは中間の「ハート」と呼ばれる部分のみボトリングします。

アランビケ ミニチュア

11月の訪問で、作りたての未加水の蒸留酒を味見させてもらいました。

試飲した加水前のオルッホ 2016年11月撮影
そのアルコール度数は65℃。グラスを近づけただけでぶどうの華やかで甘い香りが立ち上ぼります。
口に少しだけ、なめるように含むと、芳醇な風味が口一杯に広がりました。

口中に長く残り鼻に抜けるぶどうの濃縮された香りは、加水後のサラテ・オルッホでも楽しめました。
アルコールの香りが支配する工業的なオルッホとは全く風味が異なります。

サラテのオルッホは、美味しいです。

サラテ オルッホ

ガリシアの地で受け継がれた文化、歴史、職人の味。
機会がありましたらぜひ味見してみてください。
サラテ・オルッホは有限会社オーケストラが取り扱っています。



原産地呼称 La Denominación Específica Orujo de Galicia

EU統合のための新法で携行機器による蒸留が禁止された数年後、オルッホの伝統、歴史が消失することを恐れた行政が、ガリシアのオルッホとして、原産地呼称制度を立ち上げたのが1989年のこととなります。

ガリシアの土地で栽培されたぶどうで、ガリシア州内に属するワイナリー施設を通じて出される発酵したぶどうの搾りかすのみを使用することが前提となり、製造工程、容器・ラベルにも規定を設けることで品質低下を防ぎ、ガリシアのオルッホの味を守っています。

蒸留酒で原産地呼称を持っているのはスペインではガリシアのオルッホのみです。ユーロ圏内では他にフランスのマール、イタリアのグラッパなどが同カテゴリーとなります。

ガリシアのオルッホにはワイン生産地に準じたサブゾーンがあります。5つはガリシアのワイン産地である、

●リベイロ ●バルデオッラス ●リアス・バイシャス ●リベイラサクラ ●モンテレイ

また、下記の地域もサブゾーンとされ、盛んにオルッホ生産が行われています。

●ベタンソス ●ウジャ ●バル・ド・ミニョ ●オウレンセ ●ポルトマリン

オルッホの製造方法、システムは伝統製法に基づき、熟成オルッホは単一ビンテージと定められています。熟成は1000リットル容量以下のオーク樽で行われ、目減りした分の充填も同ビンテージのものとなります。「熟成オルッホ」を名乗るための最低熟成期間は500リットル以下の樽で熟成の場合1年、500リットル以上1000リッター以下の樽で熟成の場合2年と定められています。

製品は出荷前に成分分析され、認定を受けます。

現在原産地呼称の元市場に出ているオルッホは275,000リットル、そのうち5,500リットルが熟成タイプのオルッホとなります。

原産地呼称オルッホの種類

●Aguardiente de orujo de Galicia(アグアルディエンテ・デ・オルッホ・デ・ガリシア)ノーマルタイプ、熟成タイプもある

●Aguardiente de Hierbas de Galicia(アグアルディエンテ・デ・ジェルバス・デ・ガリシア)と

●Licor de hierbas de Galicia(リコール・デ・ジェルバス・デ・ガリシア)があり、

こちらは原産地呼称のオルッホ・デ・ガリシアを使用し最低3種以上のハーブを漬け込んだもの、またはオルッホ・デ・ガリシアの蒸留時にハーブを一緒に蒸留したもので、前者はリットルあたり100gの糖、後者はリットルあたり100g以上の糖を含むもの。

どちらも使用されるハーブはこちらが一般的:ミント、カモミール、レモンバーベナ、ローズマリー、オレガノ、タイム、コリアンダー、オレンジの花、ディル、甘草、ナツメグ、シナモンなど

●Licor Café de Galicia(リコール・デ・カフェ・デ・ガリシア)

こちらもハーブ同様、原産地呼称のオルッホ・デ・ガリシアを使用し焙煎したコーヒー豆を漬け込んだもの、または蒸留時にコーヒー豆を一緒に蒸留したものでリットル当たり100g以上の糖を含むもの。

~その他、生産地呼称外のオルッホ~

Aguardiente de orujo tostada(アグアルディエンテ・デ・オルッホ・トスターダ)・・オルッホにカラメルを加え風味を出したもの

Crema de orujo(クレーマ・デ・オルッホ)・・オルッホに練乳を混ぜクリーム状にしたもの

ケイマーダ

オルッホに砂糖を入れ火をつけて飲むケイマーダについては追記中です。

ケイマーダ ガリシアの神秘のお酒:作り方

ケイマーダ



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  2 comments for “ガリシアのオルッホ(ぶどうの蒸留酒)

  1. ときぞ
    2017-04-13 at 13:04

    こんにちは。つい最近このブログを見つけました、基本人のブログはあまり見ないし返信なんて1度もしたことがありませんが、えり子さんの書く内容がまるで好み(変な日本語)で☺☺☺

    唐突ですが、もしかして会社名○コ○ニ、ではないでしょうか?今もなのか?昔?、新橋の方に会社がありはしませんでしたか?
    間違っていたらごめんなさい。

    今月バジャドリッドとビーゴに行ってきます!

    • Eriko
      2017-04-14 at 13:36

      ときぞさん~
      コメントありがとうございます!

      会社はス〇ル〇ではありません~ 新橋にオフィスがありますね^^
      バジャドリッドとビーゴとはまたなかなかな目的地ですね。
      Buen viaje!

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