バスク・ゲタリア、雨の日。

ある日の午後立ち寄った、ドノスティアの小さな港町。

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鉛色に鈍く曇り始めた空から雨粒が落ちてきて

波止場の駐車場に入った私たちの車に音を立てた。

しばし呆然として

ガラス越しに雨を見る。

降り始めて数秒で粒がボンネットで白く泡立つほどの盛大な雨。

白く霞んだ港には誰もいなかったけど

港を見下ろすレストランには暖かな光が灯っていた。

港の凪いだ水面を

雨が列になり通り過ぎていく。

そのたびにできる水の波紋が

無人の漁船を揺らしていた。

前かがみになって車を飛び出した私たちは

港から町に上がる石の階段を駆け上って

明かりの灯ったレストランを通り過ぎた。

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炭焼きの香りと、店内から漏れる豪快な話し声。

惹かれる思いを背に

町の入り口のアーチの下へ飛び込んだ。

薄暗く、ひんやりとした石造りのアーチの下で

友人と二人びしょびしょの顔を見合って笑う。

通り過ぎたレストランへの未練を話す。

鼻に残る暖かな炭の香りと、耳に残る豪快な笑い声は

冷たい雨粒の向こうに遮られて、なんだかもうずっと前の出来事のようだった。

アーチを出た瞬間

雨が止んだ。

 

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世界で一番という名が付いたバルに入り

泡立ったチャコリを流し込みながら

カウンターにあふれるほど盛られたピンチョスに見惚れた。

チャコリの酸味が目に沁みて

余計にたばこに火をつけた。

何杯目かのチャコリを飲み干してから

私たちは港へ戻った。

あの暖かな光のレストランは雨よけを取り

今度はもっと盛大に笑い声が響いた。

1時間にも満たない寄り道を終えて

湿ったパーカーが肌に張り付き不快な車内

私は驚くほど心震えていた。

だって雨に包まれたゲタリアは

とってもとっても

美しかった。

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